2023-12-26
新型コロナウィルス感染症は世界の旅客輸送に打撃を与え、航空産業は2020年から2022年に累計で2,010億米ドルの損失を計上しました。この打撃からの脱出を加速するために、各国ならびに航空産業関連サプライチェーンは積極的に新たな発展方向を模索、その中で「ネットゼロ・エミッション(ネットゼロ)」もまた各国あるいは企業が航空機製造業を振興する手段の一つとなりました。国際航空産業が2050年のネットゼロ実現を承諾したことに伴い、国際的な航空宇宙企業は持続可能な航空燃料、水素、電力など新たな代替エネルギーを使う推進システムやエンジンの開発を始めました。これは、また将来エンジン作業や関連する部品の生産製造に技術的なチャレンジとビジネスチャンスをもたらします。
近年各国の航空産業サプライチェーンは炭素削減の潮流に積極的に合わせています。欧米の大国および周辺の競争国は各国とも前倒しで炭素削減目標を設定しており、さらに一歩進んで航空サプライチェーンの炭素削減技術の発展を推し進めています。国際航空運送協会(International Air Transport Association: IATA)は、世界の航空業界は2050年ネットゼロという目標の実現に向けて努力しようとしており、(1)持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel: SAF) の使用を高める、(2)電力や水素の新技術を応用する、(3)航空インフラや航空交通管制のオペレーション効率を向上させる、(4)カーボンオフセットあるいは二酸化炭素回収の技術を運用する、という方法で達成する、ことを表明しました。
航空産業の炭素削減という趨勢に対応するため、エアバス(Airbus)、ボーイング(Boeing)、GEエアロスペース(GE Aerospace)、サフラン(Safran)など航空機やエンジンの製造メーカーは、新エネルギー航空機開発計画もしくはコンセプト機の試験飛行と商業化スケジュールを陸続と公開しています。
エアバスは2020年9月に「ZEROe」という名称のゼロエミッション・コンセプト機3種類を公に発表しました。この3種類の航空機はすべて液体水素を主要燃料とし、水素燃料電池のハイブリッド動力システム設計を搭載、2025年に水素燃料推進技術が実用化可能であり、2035年にこの3種類の水素エネルギー航空機すべてを民間航空市場へ投入する予定です。
ボーイングは主として以下の4点から炭素削減を進め、川下分野の顧客の炭素削減に協力しています。(1)さらに効率の良い航空機を持続的に開発すること、(2)持続可能な燃料の開発に投資しそれを利用すること、(3)ボーイングの工場、作業場およびサプライチェーンの環境保護オペレーションを向上させること、(4)顧客が保有する機材のオペレーション効率の改善に協力すること。
持続可能な燃料(SAF)については、水素エネルギー推進システムの開発に比べ、ボーイングがSAFを採用する技術障壁はより低く、安全性もさらに高いことから、同社はSAFの使用と耐空性飛行試験をより優先的な戦略にしようとしています。2021年初め、ボーイングは2030年に同社が製造する全航空機でSAFを100%採用することと関連する安全認証を取得することを公約しました。2022年、同社はEPIC Fuels社から200万ガロン(約757万リットル)のSAFを供給を受けることで合意に到達、EPIC Fuels社は民間飛行業務に燃料を提供することになりました。これはまた史上最大のSAF購買案件であり、ボーイングはSAFを最も直接的な航空脱炭素方法と見なしており、これによりコストを低下させたいと考えています。
GEエアロスペースとサフランの両社は2021年6月14日にCFM International社の合弁関係を2050年まで延長すると発表しました。と同時に、RISE(Revolutionary Innovation for Sustainable Engines: 持続可能なエンジンの革命的なイノベーション)計画を開始しました。その主旨は、新型のエンジンを開発し、燃料の消耗を20%超減少させ、合わせて炭素排出量を削減することにあります。新エンジン計画ではファン構造を覆うことでエネルギー技術に代替し、2030年半ばにビジネスオペレーションに投入、単通路型旅客機の燃費を向上させ、炭素排出量を減少させる見込みです。
我が国の航空部品製造メーカーは国際的な航空宇宙産業チェーンにおいてすでに重要な位置を占めていますが、同時に多くの外国大企業も機体構造アセンブリ―、複合材料、ファン・ブレード等部品の重要サプライチェーンに入っています。たとえ、大企業各社が短期間で新しい代替エネルギー動力を発展させたとしても、航空機方面では依然として技術面で克服すべき課題が多々あります。たとえば、100%SAF燃料を使用した耐空性飛行試験、電池の容量、航続力、重量や充電といった問題です。また、水素の貯蔵や燃焼システムが、機体、エンジンの構造、部品の設計、材料の使用に与える影響、ひいては後に続く新技術や新材料の認証という難題です。このような事情はありますが、新しいタイプの航空機や新型エンジンの発展は相当程度期待できるものですので、今後の趨勢と技術の進展に注意を払い続ける価値があります。
台湾の航空製造業は、産業特有の制限に直面しています。原料や人員、製造工程には委託者認証が定める制約があり、高額の資本投入と認証コストは産業がたやすく構造転換することを困難なものにしています。このほか、国内のエンジン・サプライチェーンは漢翔航空工業(Aerospace Industrial Development Corporation)などTier-1企業を中心として協力下請けネットワークを形成しており、少数の企業だけが外国企業に製品を直接納入しています。このため、台湾の企業が国際メーカーのリスク・収益共有メカニズムに参与することは難しく、新型部品の研究開発や設計をタイムリーに理解することも困難です。それゆえ、炭素削減の潮流がもたらした新市場や新製品のビジネスチャンスに対応するとき、台湾の会社は川下の顧客が提示する商品規格と注文を受動的に待つことしかできず、主体的に研究開発に参与することは難しいのです。
このような状況にもかかわらず、大企業がサプライチェーンの炭素排出管理を炭素削減戦略の一つと見なしてから、近年では大企業が生産コスト低減のため、生産拠点を移転したり毎年毎年価格をカットするという流れのなか、炭素排出は大企業が生産コストやサプライチェーンの配置を考える重要な要素になると予想することができます。特にエンジン技術の発展方向と市場においては、CFM International社の国際RISE計画から予期可能なように、今後10年以内にエンジン交換の一波を迎えるでしょう。新しい代替エネルギーの使用に対応するため、新型エンジンは軽量化材料を応用するものでしょうし、部品の構造設計上も現在と異なるところが数多く生じるでしょう。韓国などの周辺競争国は、生産効率を向上させ、部品の軽量化一体化製造能力を引き上げるべく、すでに航空産業のスマート製造技術や積層造形技術の研究開発を強化すべく積極的に努力しています。このような状況ですから、我が国の関連サプライチェーン企業は、直接的あるいは間接的に炭素排出削減を達成し、さらには競争力を高めるために、いかにして新しいデジタル技術あるいは新加工技術を応用して製造工程・加工方法・工場や人員管理の効果効率を最適化するのか、を考える必要があります。
資料來源: 財団法人金属工業研究発展センター金属情報網
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